M子との出会い
M子とはじめに会ったのは今年の2月だった。
はじめて会う前から、愛し合っていたのだろうか?
そうとは言えないが、そうとも言える。
半分本気で半分戯れだった。
それは「恋人ごっこ」から始まった。
「恋人ごっこしませんか?」
他愛もないネットコミュニケーションが始まった。
去年の夏頃のことだ。※2014年8月
何度もテキストデータを送り合った。
それから二ヶ月経過して
文字のコミュニケーションから
「声」のコミュニケーションに変わった。
はじめて彼女の声を耳にしたのはちょうど去年の今頃だった。
※2014年10月
はじめて彼女の声が耳に飛び込んできたとき
肉体が反応した。
股間の疼きを覚えた。
それまでは、戯れの「恋人ごっこ」のはずだったが、
官能的な悦びに変わった。
それ以前に彼女の顔写真は見ていた。しかし、声を聞くという体験は格別に違う何かナマな感触を覚えた。
彼女は確かにこの世界に生きているんだ。
「生きて」いるんだ…
たしかにナマなものに触れた。
いままでデジタルな存在で希薄な世界との交流でしかなかった。しかしその日を境に確かな「生」なつきあいに変わった。
「生命」(エロス)の高揚感
異性である「女」を確かに感じ始めた。
雄の本能に火が付き始めた。
まもなく50才になろうという壮年の男に忘れそうになっていた恋の炎がメラメラと燃え始めた。
何度も声を交わしている中で、やがて二人は肉体的も結ばれたいという思いを育んでいった。
会ったら触れてみたい。
写真じゃなく、電波から聞こえる声でもなく、ホンモノの肉体に触れたい。
会ったら肉体的にも結ばれたいと願うようになった。
そして、今年の2月に会った時
はじめてお互いの肉体に直接触れたという事実と、リアルな感触に興奮し、高揚感に浸った。
何度も抱き合いキスをした。
もうこうなることはわかっていた。「会えば、お互い我慢できないだろうね。」そう話ていた。SEXすることになるだろう。いや、そうしたいと思っていた。ただ、いまひとつ自信がなかった。
ずいぶんSEXしていなかった。妻とはもう何年もレス状態だった。それまでに好意を寄せてくれた女と何度か試みたことはあったが、とても満足なSEXはできてなかった。
自分の肉体の老いを自覚していた。
そろそろバイアグラとか使ってみるか。そんな気持ちにもなっていた。
その夜、
泊まったホテルで何度も何度も交わろうと努力した。
女の肉体に触れて勃起はするのだが、どうしても彼女の膣に入るだけの固さが維持できなかった。
加齢によるEDだった。情けなかった。
何度も何度も交わろうと頑張った。
だが無理だっだ。深呼吸をしたり、お風呂に入ってから試みたり、いろいろな努力をしてみたが思うように結ばれなかった。
彼女は辛抱強く、交わろうとする努力につきあってくれた。優しい子だった。
裸で抱き合ったまま眠気に襲われて、何度となく意識が消えた。少し眠っては起きて、また試みた。
「やっぱりダメだ。」私がそう言うと彼女は残念そうな顔をした。
寂しそうな表情を見ると、もう一度頑張ろう。そう思った。
あきらかに私の肉体の老いのせいなのだが、「わたしのせいかも」そんな言葉を口にする彼女の優しさに応えたかった。
何度も試みて、白々と夜明けが来た。
朝が来て部屋を出れば、もうそのままお別れになるかもしれない。
そんな終わりにしたくない。
最後にもう一度だけ、頑張ってみたい。
そんな思いで私は自分の陰茎を彼女の膣口にあてがった。
固さが維持できた。
ただ、ようやく中に入ったと思ったら、すぐに射精してしまった。
しかし、思わず出てしまった。そんな感じではなかった。
むしろ、固さが維持できないから、このまま射精してしまいたい。そんな気持ちだった。
そんな状態だから、彼女を悦ばせるどころではなかった。
自虐的に内省した。
ただ頑張った。
ようやく彼女の膣内に射精した。
少しがっかりしたけれども、膣内に入れたのだ。
そして射精したのだ。
まがりなりにも、SEXしたのだ。
そう実感できた。
嬉しかった。
そんな状態なので避妊はしてはいない。
彼女の膣内に直接射精した。
そんなあまりにも早すぎる射精だったが、彼女は喜んでくれた。
私の精液が自分の膣内に注がれたことで、結ばれたという実感ができたのだろう。
彼女はほとんど眠らないまま、ずっとつきあってくれた。
本当に献身的で優しい子だと思った。
朦朧とした意識の中でお互い照れくさく見つめていた。
そのまま部屋を出て仕事に向かった。
くらくらするような眩暈を覚えた。
この出来事が、老いていく自分の情けなさから立ち直る大きなきっかけになった。
この日からわたしは老いに逆らうべく発奮した。
筋トレも始めた。
生きている歓びを取り戻そう。そう自分に誓った。
電流が身体中に走り始めた。男性ホルモンが漲っていくのを実感していた。
これは確かに「IKIGAI」だった。